3Dセキュア義務化で不正は減った? 約8割のEC事業者が実感する“次の課題”
「3Dセキュアを導入したのに、不正が減った実感がない」「本人認証を挟むようになってから、購入をやめてしまうお客様が増えた気がする」――。EC事業者から、こんな声が聞こえてきます。2025年4月、すべてのEC加盟店で導入が義務づけられた3Dセキュア(EMV 3-Dセキュア)。あれから1年あまりが経ち、義務化後はじめての通年データが出そろいました。
では、実際のところはどうなのか。数字を見ると、不正利用の被害額はたしかに減っています。一方で、カゴ落ちや決済手数料の負担、認証運用の手間といった新しい悩みも、事業者側で増えています。ここでは、義務化で何が変わったのかを、良かった面と負担が増えた面の両方から、公表されたデータで見ていきます。
目次
3Dセキュアとは?なぜ義務化されたのか
3Dセキュア(EMV 3-Dセキュア)とは、オンラインのクレジットカード決済で、カード情報の入力に加えてワンタイムパスワードや生体認証による本人確認を行い、なりすまし決済を防ぐ仕組みです。2025年4月、経済産業省の「クレジットカード・セキュリティガイドライン(6.0版)」によって、原則すべてのEC加盟店に導入が義務づけられました。
カード番号や有効期限を入力したあとに、ワンタイムパスワードや生体認証で本人確認を挟むことで、盗まれたカード情報だけでは決済を通せないようにする仕組みです。3Dセキュア2.0では、すべての取引で認証を求めるのではなく、不正リスクが高いと判断された取引でのみ追加の本人認証を行う(リスクベース認証)ため、多くの買い物はこれまでどおりスムーズに進みます。仕組みそのものやメリット・デメリット、具体的な対応方法は、次の記事で詳しく説明しています。
義務化から1年あまり、不正利用の被害は減った?
結論から言うと、減りました。日本クレジット協会が2026年3月に公表した2025年通年の集計で、クレジットカード不正利用の被害額は510.5億円。前年の555.0億円から8.0%減り、長く増え続けてきた被害額が、統計上はじめて減少に転じています。
被害の大半を占めるのは、盗んだカード情報で決済する「番号盗用」で、475.4億円と全体の9割超です。四半期ごとの推移を見ると、減っていく流れがはっきりわかります。

※発生率は、被害額をクレジットカードのショッピング利用額で割ったものです(海外発行カード分は除く)。数値は日本クレジット協会の集計によります。
義務化への対応が進んだ4〜6月に被害額が大きく下がっており、リスクの高い決済で本人認証を挟む仕組みが、なりすまし購入への歯止めとして働いたと考えられます。
ただし、この減少がすべて3Dセキュアによるものとは限りません。この数字はカード会社各社の申告を集めた参考値で、カードの利用額そのものの増減など、ほかの要因も影響します。効果はあった、けれども理由はそれだけではない。そのくらいの受け止めがちょうどよさそうです。
被害を抑える効果があった一方で、対応した事業者の側には、新しい負担も生まれています。
導入後、約8割がカゴ落ちの増加を実感

そもそも「カゴ落ち」とは、商品をカートに入れたお客様が、購入の直前で離れてしまう現象のことです。本人認証というひと手間が増えれば、その離脱は起きやすくなります。
かっこ株式会社と株式会社リンクが2025年10月に公表した「キャッシュレスセキュリティレポート2025」では、3Dセキュアを導入済みのEC事業者の約8割が、導入後にカゴ落ちが増えたと回答しています。
安全性を高めるほど、本来なら買ってくれるはずのお客様まで離れてしまう。この兼ね合いの難しさが、現場に残りました。
決済手数料の値上げ交渉も拡大
事業者が抱えた負担は、カゴ落ちだけではありません。決済手数料もそのひとつです。かっこ株式会社が2025年12月にEC関連の553社へ行った「EC事業者実態調査2025」では、「不正利用が多い」ことなどを理由にカード会社から決済手数料の引き上げを打診されたEC事業者が、49.5%と約半数にのぼりました。前年から大きく増えており、値上げ交渉の広がりがうかがえます。
3Dセキュアを入れても実際の被害が十分に減らなければ、手数料という形で負担が返ってくる。認証を運用する手間に加えて、こうしたお金の負担も重くなっているわけです。
被害が減っても、不正の手口は変わり続けている
被害額が減ったからといって、不正がなくなったわけではありません。決済のときの守りが固くなったぶん、犯人側は認証のゆるい「決済の前」、たとえばアカウントの乗っ取りや他人になりすました会員登録、あるいは「決済の後」へと、狙いを移し始めています。
同じ「EC事業者実態調査2025」(かっこ)では、不正ログインの被害を受けた経験があるEC事業者は56.2%と、むしろ増加傾向にあります。3Dセキュアの認証をその場でだまし取る「リアルタイムフィッシング」のような手口も現れており、決済の瞬間だけを固めても守りきれない部分が残っている、ということです。
カード決済に代わる「請求書払い」という選択肢
ここまでのデータは消費者向けECが中心ですが、法人向けのEC(BtoB EC)でクレジットカード決済を採り入れている場合も、カゴ落ち・手数料・認証運用という負担の構造は変わりません。そしてこれらは、どれも「カードで支払いを受ける」ことについてまわる負担です。企業どうしの取引であれば、そもそもこうした負担を抱えずに済む方法があります。それが、請求書払い(掛け払い)です。
Paid

(画像参照元:Paid)
「Paid(ペイド)」は、企業間取引の請求業務を代わりに引き受け、未入金を100%保証する後払い決済のサービスです。取引先の与信審査から、請求書の発行、集金や入金の管理、支払いが遅れたときの督促まで、まとめて任せられます。
カード決済のように本人認証の画面を挟む場面がそもそもないので、認証によるカゴ落ちは起きませんし、カード手数料の値上げに悩まされることもありません。3Dセキュアの代わりになるものではありませんが、BtoBの取引なら、カード決済につきものの手間を抱えずに代金を受け取る、もうひとつの選び方になります。
- 主な決済手段:請求書払い、銀行振込、口座振替、コンビニ払い
- 強み:導入企業数5,500社超、購入会員数60万社超、利用継続率99.4%の実績に加え、未入金時の100%代金保証に対応

NP掛け払い

(画像参照元:NP掛け払い)
NP掛け払いは、企業間の後払い決済・請求代行に対応したサービスです。与信、請求書発行、代金回収、入金管理、督促、問い合わせ対応などを任せられます。
強みは、与信審査のスピードと通過率の高さです。公式サイトでは、与信審査の結果は最短即時で回答、与信通過率は99%とされています。新規取引先にも掛け払いを案内しやすく、受注機会の損失を防ぎたい企業に向いています。
- 主な決済手段:請求書払い(銀行振込、口座振替、コンビニ払い)
- 強み:与信審査は最短即時、与信通過率99%で、掛け払いを案内しやすい
マネーフォワード 掛け払い

(画像参照元:マネーフォワード 掛け払い)
マネーフォワード 掛け払いは、企業間後払い決済と請求代行に対応したサービスです。与信審査、請求書発行、入金管理などを代行し、入金保証にも対応しています。
強みは、マネーフォワード クラウドとの連携により、請求・入金・会計処理の流れを整理しやすい点です。マネーフォワード クラウド会計やマネーフォワード クラウド請求書など、周辺システムとの連携も可能です。
- 主な決済手段:銀行振込、口座振替、カード払い、コンビニ払いなど
- 強み:マネーフォワード クラウドと連携し、請求・入金・会計処理を整理しやすい
クロネコ掛け払い

(画像参照元:クロネコ掛け払い)
クロネコ掛け払いは、ヤマトクレジットファイナンスが提供するBtoB向けの掛け払いサービスです。与信、請求書発行、集金、入金管理、督促などをまとめて代行します。
強みは、ヤマトグループの金融サービスとして、請求業務の効率化に加えて売掛金保証や早期資金化まで相談しやすい点です。
- 主な決済手段:銀行振込、口座振替、カード払い、コンビニ払いなど
- 強み:ヤマトグループの金融サービスとして、請求業務の効率化に加え、売掛金保証や早期資金化まで相談しやすい
まとめ
3Dセキュアの義務化から1年あまり、不正利用の被害額は510.5億円と前年より8.0%減り、はじめて減少に転じました。本人認証は、なりすまし購入への歯止めとして、たしかに効果を上げています。
その一方で、事業者にはカゴ落ちの増加(導入済み事業者の約8割が実感)、決済手数料の値上げ要請(約半数が経験)、認証を運用する手間といった負担が新たに加わりました。しかも被害が減っても不正の手口は移り変わっていて、カード側の対策だけでは守りきれません。
BtoBの取引でカード決済の負担が重いと感じるなら、請求書払い(Paid)のように、そもそもカードを介さずに代金を受け取る方法を選ぶのも、ひとつの手です。
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監修者
小林 邦洋
株式会社ラクーンフィナンシャル 審査部 部長
