支払い(振込)手数料が発生する場合の売掛金仕訳はどうする?仕訳例と注意点を解説
売掛金の処理や支払い(振込)手数料の取り扱いは、企業の経理業務において重要な要素です。これらを適切に仕訳することで、取引の透明性を保ち、財務状況を正確に反映することができます。本記事では、売掛金と手数料に関する基礎的な知識から実務上の注意点までを網羅的に解説し、業務効率の向上を目指します。さらに、よくあるケースごとの仕訳方法や税務処理における注意点についても触れ、実務で役立つ情報を提供します。
目次
売掛金と支払い(振込)手数料の関係
売掛金とは、企業が取引先に商品やサービスを提供した後に、一定の支払期日に回収すべき金額を指します。たとえば、月末締め翌月払いといった条件で取引が行われる場合、商品やサービスの提供時点で売掛金が発生し、企業はその金額を資産として計上します。
一方、振込手数料は、銀行や金融機関が振込サービスを提供する際に発生する費用です。この手数料は、送金者または受領者のどちらが負担するかによって処理が異なります。取引先が手数料を負担する場合は、請求金額がそのまま入金されるため、仕訳処理は比較的シンプルです。しかし、受領者である企業側が振込手数料を負担する場合、請求金額から手数料が差し引かれた金額が振り込まれるため、入金金額が請求金額と異なる形になります。
このようなケースでは、売掛金と入金の金額差額が発生するため、振込手数料を含む正確な仕訳処理が必要です。この差額を適切に処理しないと、財務諸表の正確性が損なわれる可能性があるため、経理担当者には正しい処理方法の理解が求められます。売掛金と振込手数料の関係をしっかりと理解することで、適切な仕訳を行い、取引記録の整合性を保つことが可能になります。
売掛金仕訳の基本
まず、売掛金の基本的な仕訳方法について解説します。
売掛金が発生したときの仕訳方法
10万円(税込み)の商品を販売した場合、仕訳は以下のようになります。このとき、支払手数料はまだ発生していないので、単純に売上金額を売掛金として仕訳します。
借方 | 借方金額 | 貸方 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
売掛金 | 100,000円 | 売上 | 100,000円 |
売掛金を回収したときの仕訳方法(取引先が手数料を負担する場合)
売掛金が銀行振込で入金があった時には入金消込を行います。取引先が振込手数料を負担する場合は、以下のようになります。
借方 | 借方金額 | 貸方 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
普通預金 | 100,000円 | 売掛金 | 100,000円 |
関連記事:売掛金とは?混合しやすい勘定科目や具体的な仕訳例を解説
振込手数料を自社負担で回収したときの仕訳方法
自社で振込手数料を負担して売掛金を回収した場合、手数料を「支払手数料」として仕訳する方法と「売上のマイナス」として仕訳する方法の2種類があります。
「支払手数料」として仕訳する方法
振込手数料を自社負担で回収する場合、通常はその手数料を「支払手数料」として経費計上します。この場合、売掛金回収額は変わらず、その回収にかかる手数料は会社の費用として処理します。
たとえば、100,000円の売掛金に対し、500円の振込手数料が差し引かれて入金された場合の仕訳は以下の通りです。
借方 | 借方金額 | 貸方 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
普通預金 | 99,500円 | 売掛金 | 100,000円 |
振込手数料 | 500円 |
売上のマイナス(値引き)として仕訳する方法
振込手数料を自社負担で回収する場合、売上のマイナスとして仕訳をする方法もあります。この場合、手数料分を「売上値引き」や「売上返品」などの勘定科目で貸方に記載します。これは、手数料が売上の一部として控除される形で、収益の調整を行う方法です。
上記と同様に、100,000円の売掛金に対し、500円の振込手数料が差し引かれて入金された場合の仕訳は以下の通りになります。
借方 | 借方金額 | 貸方 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
普通預金 | 99,500円 | 売掛金 | 100,000円 |
売上 | 500円 |
どちらの方法を選ぶか
手数料として計上する方法は、支払手数料を直接費用として処理するため、支出が企業の経費として反映されます。なので、手数料が売上とは直接関係ない費用として処理したい場合に適しています。
一方の売上のマイナスとして仕訳する方法では、手数料を売上の一部として扱うことになります。売上額が実際に回収される金額に反映される形になるため、売上の減少として認識したい場合に適しています。
支払手数料を仕訳する際の注意点
支払手数料を仕訳する際には、いくつかの重要な注意点があります。これらを把握しておくことで、誤った仕訳を防ぎ、経理処理を正確に行うことができます。以下では、支払手数料を仕訳する際の注意点を解説します。
手数料が差し引かれる金額を明確にする
売掛金の回収時に支払手数料が発生する場合、実際に受け取る金額は手数料分が差し引かれた金額になります。仕訳を行う際は、この差し引かれる金額を明確に記録することが大切です。これにより、帳簿が正確になり、実際の入金額と記録が一致します。
たとえば、顧客から100,000円の売掛金を回収し、振込手数料として500円が差し引かれる場合、現金勘定には99,500円が振り込まれ、500円は「支払手数料」として計上されます。このように、実際の金額と仕訳金額を一致させることが求められます。
必要な場合は税抜き処理を行う
消費税を考慮した仕訳を行う場合、支払手数料も消費税の対象となる場合があります。この場合、手数料の金額を税込で計上するのか、税抜きで計上するのかを確認し、正しい方法で仕訳を行う必要があります。
消費税を適切に処理するためには、支払手数料の税込金額と税抜金額を区別して仕訳することが求められます。たとえば、支払手数料が500円で消費税が10%の場合、支払手数料は「支払手数料」500円のほかに、「消費税」50円を別途計上する必要があります。
取引先や金融機関ごとの手数料条件を確認する
取引先や利用する金融機関ごとに、支払手数料の条件や金額が異なる場合があります。これらを事前に確認し、毎回同じ条件で処理を行うことが大切です。特に、複数の決済方法や金融機関を利用する場合、手数料の種類や金額が異なるため、注意が必要です。
たとえば、銀行振込の場合、振込手数料が送金元・送金先の銀行によって異なることがあります。また、オンライン決済サービスを利用する場合も、手数料の計算方法がサービスごとに異なるため、各サービスの契約内容や手数料率を確認することが重要です。
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関連記事:3人は必要な経理業務が1人で対応可能!決算スケジュールも短縮できています~株式会社Saleshub
まとめ
売掛金と振込手数料の処理は、経理業務の中でも重要なポイントとなります。振込手数料が誰の負担になるかを明確にすることで、仕訳ミスを防ぎ、適切な経理処理が可能となります。また、入金金額と売掛金の照合を行うことで、金額の不一致や誤入金のトラブルを未然に防ぐことができます。振込手数料に関連する勘定科目の選定や、税務上の正確な処理も、業務の円滑な進行に必要不可欠です。これらの点を意識し、実務での注意点に留意することで、売掛金と振込手数料の取り扱いを正確かつ効率的に行うことができ、企業の財務状況の正確な把握が可能となります。