与信管理はどの部署が担当するべきか?専門部署を設けない場合の選択肢
与信管理には、情報収集の時間と与信限度額を設定する作業が生じます。さらに継続的な見直し作業も必要になるため、本来であれば与信管理の専門部署を設置することが望ましいのですが、近年では専門部署を設ける会社は少なくなってきています。
本記事では、専門部署を設けない場合、どの部署が与信管理を担うべきか、それぞれのメリット・デメリットについて紹介します。
目次
与信調査とは
与信とは取引先に信頼を与えることで、取引をして問題ないか、信用してよいか、取引先を調査することを与信調査といいます。
信用のない取引先では、未回収リスクが伴います。与信調査を経てリスクを抑制することが、会社を経営するうえで重要です。
関連記事:信用調査(与信調査)とは?重要性や調査の方法、活用のタイミングなどを解説
与信調査のポイント
与信調査にあたってのポイントを確認していきましょう。
取引する企業の基準策定
どのような取引先であれば安心してビジネスを進められるかの基準を策定します。業種によってビジネスモデルも変わるので、業種ごとに作成することがポイントです。
取引先の情報収集
基準を策定したら必要な情報を集めます。情報には商業登記簿やインターネット等から得られる外部情報と、直接取引先に訪問して得る内部情報の2種類があります。有料調査サービスなどの活用で、より細やかな情報収集も可能です。
営業部門から分割した与信管理部門を設置
取引先と直接やり取りをする営業部門内に与信管理部門を設置する会社も多くあります。しかし、与信管理部門は、営業部門と分割して設置することが望ましいです。取引先と直接コミュニケーションをとり、売上数字へのコミットが重要視される営業部門では、定められた与信管理基準を無視して取引を行ってしまうこともあるためです。
関連記事:与信管理の基準の設定方法~与信限度額の設定方法とポイント
与信管理の専門部署は必要か
与信管理は販売管理と財務管理の主要なマネジメント機能をつなぐ重要な業務です。そのため、与信管理を効果的、効率的に行い、リスク抑制に注力している企業は専門部署を設けています。
与信管理の専門部署を設けるメリット
与信管理の専門部署を設けることで、収集した情報からリスクを洗い出し、取引先ごとに評価・格付けを行うなど、よりきめ細かい対応が可能になります。また、社員に対する継続な教育も実施できるようになります。
また、与信管理ルールを作成していても、自社の事業環境や目標と整合性が取れていなければ、運用自体が困難になります。与信管理の専門部署であれば、会社の現状と与信管理ルールを定期的に突合せ、リスク分析のうえで調整を図ることが可能です。
与信管理を行っていると、営業部門と管理部門で基準にバラつきが生じがちです。専門部署を設けることで、それぞれの情報を確認し的確に判断を行えるため、バランスのよい管理が可能になります。
与信管理の専門部署を設けるデメリット
メリットの一方、与信管理の専門部署を設けることによる注意点もあります。
まず、高い情報収集能力や分析力が求められる職務領域となるため、十分なスキルや経験を有する人員確保が困難であることです。また、同じ担当者が継続的に審査を行う弊害として、判断に偏り・属人性が生じるおそれがあります。さらに、作業に慣れてしまった結果、業務が単純化してしまい、大切な項目を見落とす可能性も懸念されます。
与信管理の専門部署を設けるか否か、慎重に検討する必要があります。
審査部以外で与信管理を担当する部署
専門部署を設けない場合は、既存の部署で与信管理を担当することになります。
- 経理部
入金管理や財務情報を扱う経理部が担当することが一般的には多く見られます。
- 総務部
新規取引先がほとんどなく、既存取引先も少数で経営が安定している場合は、与信管理自体が重要視されません。このような企業の場合、総務部が与信管理を担当することが多いようです。
- 営業部
債権未回収となった数字の穴埋め、コントロールを重視する場合、営業部として与信管理を担当することが多いです。
- 法務部
契約内容にリスクが大きい業界においては、法務部が与信管理を担当する場合があります。
審査部以外が与信管理を担当するメリット・デメリット
このように、部署により管理特性や視点が異なります。それぞれの部署ごとに、与信管理を担う場合のメリットとデメリットを見ていきましょう。
経理部の場合
経理部が与信管理を担当する場合、次のようなメリットとデメリットがあります。
メリット
- 財務分析に抵抗がない
- 入金管理を行っているため情報が早い
与信管理では財務分析が重要な業務になります。経理部であれば財務分析に抵抗なく着手できるほか、期日通りに売上債権が回収できているかの確認も行っているため、確認・連絡オペレーションがスピーディーに回ります。
デメリット
- 情報の不足
- 営業部門の状況がつかみづらい
経理部での情報収集は、商業登記簿やインターネット等、外部情報に限定されがちです。一般に、内部情報は経理部では手に入らないため、情報量によっては与信調査に偏りが生じます。
また、与信限度額の設定が行われる前に取引が開始されてしまう場合があります。経理部で与信管理を担当するのであれば、営業部との密な連携は不可欠です。
総務部の場合
総務部が与信管理を担当する場合、下記のようなメリットとデメリットがあります。
メリット
- 与信管理のコンパクト化
- 与信管理コストを抑える
決まった企業としか取引を行わず、必要最低限の与信管理で問題がないと判断された場合には、決められたルールのもとに与信管理作業を総務部が定期的に実施するケースが見られます。作業がコンパクト化し、コストを最低限に抑えられることがメリットとして挙げられます。
デメリット
- 急な変化に対応できない
- 個別対応が困難
総務部で行う場合、あくまでも最低限の作業になることが多いため、たとえば取引先が倒産しそうだという場合に、即時対応が困難になります。また、財務分析や契約内容についても専門ではないため、解決策を練るのに時間を要します。
営業部の場合
営業部が与信管理を担当する場合のメリットとデメリットも確認していきましょう。
メリット
- 情報量が豊富
- 営業担当者目線での管理ができる
営業部は取引先と直接コミュニケーションをとる機会が多いため、内部情報を豊富に獲得できます。取引先のちょっとした変化にもいち早く気づけるのは、営業部ならではのメリットです。また、未回収の債権が発生した損失を補うための売上獲得のコントロールも、現場に近いからこそスピーディーに対応できます。
デメリット
- 取引を優先してしまう
- 回収遅延の確認不足
営業部は売上獲得を担う部署であるため、与信よりも取引を優先してしまうケースが散見されます。結果、与信限度額の設定基準もゆるみがちです。また、経理部からの回収遅延情報への反応が鈍くなってしまった場合、いつまでたっても回収見込みが立たなくなる可能性もあります。
法務部の場合
法務部が与信管理を担当する場合は、下記のようなメリットとデメリットがあります。
メリット
- 契約内容によるリスク軽減
- 問題が発生したときの対応
ひとつの契約が高額な製品・サービスを主として取り扱っている企業の場合は、契約1件あたりのリスクも大きくなるため、法務部が与信管理を担当することが多いです。万が一取引先に問題が発生した場合にも即座に対応が可能です。
デメリット
- 現場情報の不足
- 未回収案件の把握や指示が遅くなる
与信管理で主に作業が発生する部署は営業部と経理部です。与信管理を法務部で担当する場合、情報をそれぞれの部署から入手するため、情報の取りまとめが複雑化します。また、未回収案件について経理部より報告があり、その後の指示を営業部に出すといった流れも、他の業務に押されてしまいスムーズに進まない場合もあります。
与信管理を代行するサービスの活用
与信管理を担当する部署に応じて、想定されるメリット・デメリットはさまざまあります。専門部署を設けられない場合であれば、与信管理を代行するサービスの活用やツールの導入も検討されるでしょう。
与信管理の代行も行う、BtoB掛売り決済サービス「Paid」の導入により、与信管理の負担やリスクが軽減した事例をご紹介します。
導入企業 | 株式会社アレグロマーケティング |
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業種 | 卸・販売 |
【Paid導入前の課題】
- 他社のサービスには高額な製品の取引に利用できるプランがなく、送り状番号も必要
- 営業には未回収リスクの不安が常に付きまとっていた
【Paid導入後の効果】
- 利用の制限がないので取引の幅が拡大
- 未回収リスクを気にすることなく積極的な営業活動が可能に
- 与信管理も丸ごとおまかせできるので助かっている
高額な取引の場合であっても、与信管理システムの導入・リスクヘッジ効果により、安心して積極的な営業活動を展開できるようになります。さらに、与信審査もすべてシステムで行えるため、作業負担が大きく軽減されます。
関連記事:積極的な営業活動の展開へ~株式会社アレグロマーケティングの導入事例
まとめ
与信管理専門の部署を設けない場合、担当する部署に応じたメリット・デメリットの両面があることを把握しておきましょう。自社の状況に合わせ、どの部署が与信管理を担当すべきか、よく考慮し設置することが大切です。また、与信管理サービスの導入による、作業負担の軽減や売上向上効果にも目を向けてみてください。