与信管理システムとは?サービス内容と利用するメリット・デメリット
安定した会社経営や成長戦略の推進、そして貸し倒れを防ぐために、取引前、そして取引後の継続的な与信管理は欠かせません。しかし与信管理をすべて手作業で行おうとすると、多くの手間がかかってしまいます。
そこで検討したいのが、与信管理システムの導入です。本記事では、与信管理システムのサービス内容とともに、システム化のメリット、デメリットを解説します。
目次
与信管理システムとは
与信管理システムとは、取引先の「限度額」と「売上債権の残高」などを一元管理できるシステムのことです。取引先が増えるにつれて与信管理にかかる工数も増えるため、こうしたシステムを使うことで管理工数を削減することができます。また、請求書発行や督促機能も有するシステムであれば、請求業務の効率化にも大きく寄与します。
さらに与信管理システムでは、取引先のさまざまな情報を収集・管理することができるので、限度額を決定する際の精度が向上し、与信管理の強化にもつながります。
与信管理システムは、さまざまな企業で導入が進んでいます。なかでも卸やアパレルなど取引先が多くなる業種や、WEBサービスやサブスクリプション型の事業を展開し有料会員を多く抱える企業では、与信管理システムの利用はスタンダードになりつつあります。
そもそも与信管理とは
与信管理とは、取引予定の企業や取引している企業に対して、代金の回収ができなくなるリスクを低減するために、与信の管理を行うことです。
BtoB(法人)取引では、一定期間内に取引した代金を後日まとめて受け取る「後払い(掛け取引)」が一般的です。後払いの場合は、代金が支払われず回収できなくなる未回収リスクが存在します。
取引予定の企業に対しては、必要な情報の収集と分析によって信用力を評価し、「与信限度額(取引上限金額)」や「契約条件」などを決定します。
いったん与信限度額などを設定しても、いつ取引先の経営状況や財務状況が悪化するかは分かりません。取引開始後も、支払い遅延が発生していないか、業績や財務に変化がないかを確認し、定期的に取引先の信用力を見直すことが必要です。それに伴って与信限度額なども見直しながら、常に未回収に対するリスクが最小限になるようにコントロールするのが与信管理です。
与信管理はなぜ必要?
与信管理は、安定した事業遂行や、利益損失の回避に欠かすことができない業務です。
たとえば取引先の倒産により売掛金を回収できないと、仕入れ代金や経費の支払いが行えなくなり、最悪の場合、倒産してしまうというリスクもあります。
また、与信管理をしないことが自社の信用低下につながることもあります。取引先からの入金遅延などが重なると、「この会社は与信管理が徹底されていない」として金融機関からの信用が落ちてしまうのです。それにより、事業運営に必要な資金が十分に借りられなくなるなど、ビジネスの存続にも悪影響を及ぼしかねません。
与信管理システムの内容
事業規模が大きくなり取引が増えるほど、取引先に対する与信審査や請求にかかる手間は膨大になっていきます。そこで与信管理システムは、会社と取引先との間に立ち、主に以下の内容を行うことで取引に関わる手間を軽減してくれます。
- 取引先情報の収集・一元管理
- 反社チェック
- 信用スコアリング
- 与信判断の支援
- 与信事後管理
- 与信管理規程の作成・運用
- 売掛保証
それぞれの内容について具体的に説明していきます。
取引先情報の収集・一元管理
与信を判断するために必要な情報は、企業の公式サイトや業界専門のメディア、SNSなどから収集しますが、時間がかかるうえに、中小零細企業の場合は十分な情報が収集できないことも多々あります。
与信管理システムではこうした情報の収集が自動化され、さらにそれらの情報と信用力やスコアを一元管理することができるため、与信管理が効率化できます。
またシステムによっては独自に保有する膨大なデータベースを提供しているものもあります。そうしたデータを活用することにより、与信判断の精度を上げることも可能です。
反社チェック
反社チェックは、取引先や顧客が反社会的勢力に該当しないか、関係がないかを確認するプロセスです。これにより企業は法的リスクや社会的信用の失墜を防ぐことができます。
しかし、反社チェックを自社で行うとなると、手間がかかるだけでなく、反社であることを見抜けずに取引してしまうリスクもあります。与信管理システムでは、すでにデータベース化された情報から効率的に確認ができます。また、自動で定期的な再調査が実施できるため、最新情報を常に保持できます。
反社会的勢力との取引は法律で禁止されており、違反すれば罰則があります。また社会的信用の失墜により、取引停止や融資停止などの経営リスクが生じます。これらのリスクを避けるためにも、反社チェックは必須です。
信用スコアリング
取引先企業の情報を収集し分析した後は、取引を行うべきかどうかを判断します。問題ないと判断できた場合は、与信限度額を設定します。
十分な情報が収集できたとしても、そこから正確な与信限度額を設定するには専門的な知識が必要になります。与信管理システムでは、財務状況や与信情報から取引先の信用力をスコアリングしてくれるため、そのスコアをもとに自社の基準に基づいて与信限度額を設定しやすくなります。
与信判断の支援
与信判断の支援として、取引先に対して行う与信審査業務サポートがあります。
取引を開始する会社のなかには、情報があまり公開されていないこともあるため、信頼できるかどうかの判断が難しくなるケースもあるでしょう。そこで十分に与信審査をしないまま取引を行ってしまい、あとからその会社が反社会的勢力と関係があるなどと判明すると、会社としての信頼も落ちてしまいます。
しかし、与信管理システムを利用することで、情報が掴みにくい会社の与信審査や反社チェック等を簡単に行えるようになります。
与信事後管理・モニタリング
与信事後管理とは、取引が始まったあとの債権期日の管理などを行うことを指します。また、取引先の経営内容や担保価値などを定期的にチェックし、与信限度枠の見直しも行います。
取引前に与信審査を行うことは、未回収リスクを低減するために欠かせません。一方で、取引が始まったあとも取引先の与信管理を行う必要があります。取引先の経営状況は逐一変化するため、場合によっては経営悪化により販売代金の回収が行えなくなるリスクが生じるからです。
モニタリングは、日ごろから取引先企業のデータ収集に努め、与信に関わる情報を迅速にキャッチする業務です。与信管理システムでは、取引先の財務状況や信用スコアリングを自動でモニタリングし、スコア変動があった際や未払いリスクが高いと思われる取引先を検出した際にアラート通知を出してくれるため、効率的かつ有効なモニタリングが可能です。
与信管理規程の作成・運用
与信管理規程とは、与信管理を進めるプロセスを明文化した社内規定のことです。与信管理のルールが明確になっていないと、社員によって取引先の審査基準がバラバラになってしまいます。そのため、与信管理規程の作成は欠かせないものです。
しかし、詳細な与信管理規程の作成には膨大な労力と手間がかかります。与信管理システムの使用により、与信管理規程を簡単に作成できるようになるため、作成にかかる工数を大幅に減らすことができます。
関連記事:与信管理規程の作り方~遵守のための工夫や限度額の設定・規程の雛形
売掛保証
売掛保証とは、取引先の倒産などによって売掛金が回収できない場合、すべての金額の支払い保証が受けられることを指します。
どんなに与信審査を重ねても、取引先の経営が悪化するリスクをゼロにすることはできません。そして代金の回収ができないと、経費の支払いに充てる資金がなくなり、自社の事業を円滑に回していくことも難しくなります。
与信管理システムには、売掛金の回収ができない場合にその全額を支払ってもらえる保証がついています。売掛保証がついていることで、万が一のことが起きた場合の未回収リスクを解消でき、より安心して事業運営に取り組めるようになります。
与信管理システムを利用するメリット
与信管理システムを利用することで、企業は以下のようなメリットを受けられます。
- 与信管理の精度を上げることができる
- 与信管理を効率化できる
- データの豊富なプロに任せて安心
与信管理の精度を上げることができる
与信管理は未回収リスクを低減するために必要ですが、精度が高くなければ意味がありません。リスクを最小限にするには限度額を控えめにするのも一つですが、そうすると客単価が上がらず、売上にも影響してしまいます。
与信管理システムでは、しっかりと与信に見合った限度額が付与されるため、適切にリスクも低減できます。
▼導入事例~自社の設定より大きな限度額が付与され客単価が向上
導入企業 | 株式会社生活の木 |
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業種 | アパレル・雑貨 |
導入前の課題
リスクを考えると、新規のお客様には数万円しか限度額を付与できていなかった。また新規の注文を受けた後に与信の審査をしており、のちほど必要な審査書類を提出いただけない場合は利用を停止するというやり方だったので、継続取引率が50%ほどしかなかった。
導入後の効果
与信管理システムだと自社で対応していたときより、限度額が大きく出るお客様が非常に多く、個人事業主の方でもしっかりとした限度額が付与されるように。それによって大口の注文や、定期的な注文も増加し客単価・購入頻度ともに向上。さらに与信管理システムで与信が通らない以外のお客様はすべて継続取引が可能になり、お客数の増加にもつながっている。
関連記事:プラスを生み出す仕事に集中できるように!大きな限度額で売上もUP~株式会社生活の木
与信管理を効率化できる
与信管理は、取引を始める会社の資料を入手し分析する「信用調査」、そして「与信限度額の設定」の大きく2つの業務に分かれます。これらの作業は信用取引において欠かすことができない一方、すべての作業を社内で行うには相応の労力がかかります。自社調査をするにしても、担当人員の確保や時間、会社資料の入手に伴う費用もかかってきます。
その点、与信管理システムを使うと、与信管理にかかっていた作業やお金、そして時間のロスを削減できます。それにより生まれた人員や時間を営業活動などに割くことで、利益創出の機会を生み出すことにもつなげられるでしょう。
▼導入事例~与信調査にかかっていた手間や費用が大幅削減
導入企業 | 株式会社アミナコレクション |
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業種 | アパレル・雑貨 |
導入前の課題
与信審査のため、1社ごとに帝国データを調査していたことから、手間も費用もかかっていた。また、代金の回収を営業社員が行っていたことで、場合によってはリスクを避けるために前払いをやらざるを得ない状況も生まれていた。
導入後の効果
与信管理システムを導入したことで、与信金額の確認が簡単にできるように。与信調査を代行してくれることで手間や費用も減り、新規のお客様とも安心して後払いができるようになった。また、取引先の小売店が代金を支払えなくなった場合の補償があることは、会社経営の安心材料にもつながっている。
関連記事:与信確認の手間削減と保証の安心感がメリット~株式会社アミナコレクション
取引実績にもとづいた与信枠が設定される
与信管理システムを利用することで、取引実績にもとづいた与信枠が設定できるというメリットもあります。
与信枠は、収益機会と与信リスクのバランスを見て設定されます。もちろん、取引実績が増えた会社は信用も積み重なっていることから、今後の取引拡大も踏まえて与信枠を柔軟に変えていく必要があります。しかし、与信枠を増やすには、取引先の信用力の再審査が必要になるなど手間がかかります。
一方で与信管理システムを使うと、システムに蓄積された膨大なデータをもとに、これまでの取引実績にもとづいた与信枠を自動で設定してくれます。そのため、取引金額が増えても安心して取引を行えるのです。
▼導入事例~与信枠の増大が売上増加に貢献
導入企業 | 株式会社ナカムラ |
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業種 | 家具 |
導入前の課題
発注が増える時期に与信枠が足りず、収益機会を逃してしまっていた。また、掛売りに対応していなかったことで、取引先から後払いに対応して欲しいという声を多数もらっていた。
導入後の効果
与信管理システムを導入したことで、取引実績にもとづいて与信枠が上がり、発注が増えても安心して取引を行えるように。さらに、売上の増大にもつながった。また、後払いで取引が開始できるようになっただけでなく、返金対応なども管理画面上でスムーズに行えることから、作業時間の削減も実現できた。
関連記事:取引実績にもとづいて与信枠が上がるので発注が増えても安心~株式会社ナカムラ
与信管理システムを選ぶうえでのポイント
与信管理システムを選定する際には、格付けやスコアリングの正確性、機能の充実度、保証の有無、そして利用料金など、さまざまな要素を考慮する必要があります。以下では、各ポイントについて詳しく説明します。
格付けやスコアリングの正確性
これまでお伝えした通り、与信の判断や限度額の設定は経営にも大きく影響することになるので、与信管理システムで得られる情報の正確性が重要です。正確性を判断するには、何をもとにしたデータベースでどのくらいの量を保持しているのか、そしてどのようなロジックで格付け・スコアリングを行っているのかなどを元に判断するといいでしょう。
必要な機能とコストパフォーマンス
与信管理システムに搭載される主な機能は上述した通りですが、多くのサービスでは料金プランごとに利用できる機能が限られます。与信管理の精度を上げるためにはすべての機能を使うとなると、料金もかさんでしまいます。反対に機能を使いこなせなければ、システム運用費などが無駄になってしまいます。
併せて、どのようなサポート体制が用意されているかも確認しましょう。
売掛保証があるかどうか
与信管理システムには、未払い遅延や未払いが起きた場合に、売掛金の保証がついているものもあります。どんなに与信管理をしっかり行ったとしても、未回収になるリスクをゼロにすることはできません。
そうした万が一の場合のために保証がついていると、より安心して取引をすることができます。ただ保証対象になるかどうかの条件がサービスによって異なるため、確認が必要です。
与信管理を効率化できる「Paid(ペイド)」
「Paid」は、与信管理の代行と未入金時の保証がセットになった企業間決済サービスです。与信管理をすべてまかせることで業務の効率化が図れることはもちろん、審査のプロが与信を判断するため、中小企業や個人事業主などの与信の判断が難しい相手にも、スピーディな審査が可能です。
<メリット>
- 審査にかかる時間は最短数秒。すぐに取引を開始できます。
- 反社チェックも実施するので安心です。
- 与信限度額は最大1,000万円。小口取引から大口取引まで対応できます。
- 万が一未払いになった場合は代金が100%保証。未入金リスクを気にせず積極的な営業活動を後押しします。
まとめ
与信管理は、企業にとって大切な業務のひとつです。しかし、与信管理に社内のリソースを十分に割くことができない企業も多いでしょう。そこで、与信管理システムを導入することも検討してみはいかがでしょうか。与信業務の省力化だけでなく、掛売りの開始や請求業務の効率化によって、本業の売上の増大にもつなげられるようになるでしょう。