口座振替のメリット・デメリットとは?導入にあたって知っておきたいポイントを解説
口座振替は、事業者と利用者双方にとって便利な決済方法として広く普及しています。公共料金やサブスクリプションサービスなど、定期的な支払いに多く利用されており、利用者の支払いの手間を軽減し、事業者にとっても安定した収益を確保できるメリットがあります。一方で、手続きの煩雑さや入金の遅れなどのデメリットも存在します。
この記事では、口座振替の仕組みやメリット・デメリット、導入時の重要なポイントについて詳しく解説します。
口座振替とは
口座振替とは、利用者が指定した銀行口座から自動的に代金を引き落とす決済方法です。公共料金やサブスクリプションサービス、保険料などの定期的な支払いに広く利用されています。
口座振替依頼書を提出して引落口座を登録すると、以降の支払いが自動化されるため、利用者の手間が軽減されます。事業者にとっては支払い忘れによる未回収が減るため、安定した売上の確保とサービスの利用継続率が上がることもメリットです。
口座振替を利用するにあたっては各金融機関と直接契約する方法と、決済代行会社を通して複数の金融機関と契約する方法があります。お客様によって口座を開いている金融機関は異なるため、決済代行会社が提供する口座振替サービスを利用することが一般的です。
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事業者にとっての口座振替のメリット
口座振替は、事業者にとって多くのメリットをもたらす決済方法です。安定した資金回収や業務効率の向上、顧客との長期的な関係構築など、様々な面で貢献します。
特にサブスクリプションモデルを採用している企業や定期的な請求が発生する企業にとっては、非常に有効な決済手段となります。
以下では、事業者にとっての主なメリットについて詳しく説明します。
未回収リスクを軽減できる
口座振替は、高い回収率を特徴とする決済方法です。利用者の口座から自動的に代金が引き落とされるため、支払い忘れや遅延による未払いが大幅に減少します。未回収リスクが軽減されることによって、事業者は安定した代金回収を見込むことができ、キャッシュフローも安定しやすくなります。
請求業務の手間を削減できる
口座振替を導入することで、請求業務に関連する多くの手間を省くことができます。銀行振込では、請求書の発行・送付、入金確認、消込作業、金額不一致時の再請求などの請求業務が発生しますが、口座振替ではこうした業務の多くが不要になります。
特に消込業務では、金額の不一致や請求の宛名と振込人名義の相違が発生しないため、大幅な業務効率化につながります。
サービス利用継続率が向上しやすい
口座振替は、利用者が支払いを意識しにくい決済方法です。代金が自動で引き落とされることによって、サービスの解約を検討する機会が減少するため、特にサブスクリプションモデルのビジネスで効果的です。
また支払いの手間が省けることで顧客満足度も向上し、長期的な顧客関係の構築につながります。結果として、高い回収率と相まって、サービスの利用継続率が高まり、事業者の収益基盤が強化されます。
利用者の拡大につながる
継続課金サービスでは、クレジットカード払いしか用意されていないことも珍しくありません。しかし、それ以外の決済方法がないと、クレジットカードを持っていない、またはクレジットカードの使用に抵抗がある利用者を取りこぼしてしまう恐れがあります。
口座振替を用意しておくことで、こうした利用者も取り込むことができ、利用者の拡大につながります。
利用者にとっての口座振替のメリット
口座振替は、利用者にとっても多くのメリットをもたらす決済方法です。
支払いの手間を大幅に軽減し、定期的な支払いを忘れずに行うことができます。また、現金やクレジットカードを持ち歩く必要がないため、セキュリティ面でも安心です。
以下では、利用者にとっての主なメリットについて詳しく説明します。
支払い手続きを効率化できる
利用者にとっての口座振替の最大のメリットは、支払い手続きの効率化です。銀行振込の場合は、金融機関やATMに足を運ぶ必要がありますが、口座振替では指定日に自動的に引き落としが行われるため、そうした手間が一切発生しません。
さらに、スマートフォンやネットバンキングの普及で、利用者は簡単に口座残高を確認できるため、残高管理がしやすくなっています。
振込手数料を削減できる
銀行振込では、利用者が振込ごとに手数料を負担することが一般的です。毎月支払いが発生する場合、振込手数料は年間で相当な額になる可能性があります。
一方、口座振替では多くの場合、利用者側の手数料負担がありません。これも、サービスの導入にあたってのハードルを下げ、継続利用がしやすくなるメリットと言えます。
支払い忘れによる未払いの心配がない
銀行振込の場合、支払日を忘れていて支払い期限を過ぎてしまったり、急な用事で期日までに振込ができなかったりすることで、サービスが一時停止になったり延滞金が発生したりという可能性があります。
一方、口座振替なら指定日に自動引き落としされるため、このリスクを回避できます。特に忙しい人にとって、口座振替は安心で便利な支払い方法です。
事業者にとっての口座振替のデメリット
口座振替は多くのメリットがある一方で、事業者にとっていくつかの課題も存在します。
これらのデメリットは、主に手続きの煩雑さや資金回収の遅れ、システム導入コストなどに関連しています。事業者は、これらの課題を十分に理解し、効率的な口座振替の運用方法を検討する必要があります。
以下では、事業者が直面する可能性のある主なデメリットについて詳しく説明します。
口座振替依頼書のやり取りに手間がかかる
口座振替を利用するためには、口座振替依頼書を記入し、金融機関に受理してもらう必要があります。口座振替依頼書の記入は正確に行う必要があり、記入の不備や捺印した印鑑が銀行への届出印と違う場合などは、修正して再提出しなければなりません。
口座振替の利用には、正確に記入された口座振替依頼書の金融機関への提出が必要です。しかし、記入情報の不備や印鑑の不一致が生じると、お客様に連絡したり、再度記入し直してもらったものを回収して金融機関や代行会社に再提出したりといった手間が発生してしまいます。
こうした手続きの煩雑さに加え、記入済みの口座振替依頼書を一時的に管理する必要もあるため、効率的に運用するための調整が求められます。
関連記事:口座振替依頼書とは?記載が必要な項目や起こりやすい不備を解説
請求を開始するまでに時間がかかる
引き落とし口座の設定に必要な口座振替依頼書のやりとりや金融機関での処理には、1~2ヵ月を要することがあります。 実際に請求を開始できるのはそのあとになるので、支払い方法に口座振替しか用意していない場合は、この間サービスの提供を開始できません。すぐにサービスの提供が開始できないと、せっかくの新規顧客獲得の機会を逃してしまいます。
先にサービスの提供を開始したい場合は、銀行振込など別の方法で一時的に対応することもできますが、その場合の請求の手間や管理の煩雑さも考慮して対応しなければなりません。
残高不足による引き落とし失敗のリスクがある
口座振替は一般的に回収率が高い支払い方法ですが、利用者の口座残高不足により引き落としができないケースがあります。この場合、顧客への督促連絡や、引き落とし失敗分を銀行振込で支払ってもらうための請求書発行といった追加の対応が必要となります。
引き落としができなかった場合に発生する督促業務は、営業が担当することが多く、貴重なリソースが督促業務に割かれてしまうと営業活動に専念できなかったり、心理的な負担からモチベーションが低下したりすることが懸念されます。
入金までに数日かかる
口座振替では、実際の引き落とし日から事業者の口座への入金までに約10日程度のタイムラグが発生する場合があります。キャッシュフローに影響することも考えられるため、事業計画や資金計画を立てる際には、このタイムラグを考慮しておく必要があります。
利用企業にとっての口座振替のデメリット
口座振替は利用企業にとっても便利な支払い方法である一方、手続きの煩雑さや残高管理の手間も発生します。
以下では、主なデメリットを詳しく説明します。
口座振替依頼書の記入の手間がかかる
口座振替を利用するには、口座振替依頼書の記入が必要です。口座情報などの詳細な情報を漏れなく記入したうえで、銀行の届出印で捺印します。不備がなければすぐに金融機関で受理されますが、記入内容に不備があった場合は、修正して再提出しなければならず、非常に手間がかかります。
書類のやり取りは通常郵送で行われるため、事業者だけでなく利用者側にも郵送費用がかかるのもデメリットです。
残高を管理する必要がある
口座振替では、利用者の口座残高が不足している場合、引き落としができません。引き落としに失敗してしまうと、サービスの利用が一時的に停止になったり、信用の低下にもつながったりするため、残高の管理は慎重に行う必要があります。
引落口座の設定が完了するまでサービスを利用できないことがある
事業者側のデメリットでも記載した通り、サービスによっては、引落口座の設定完了までサービス利用が開始されないことがあります。
すぐにサービスを利用したいと思ってもできないことがあるので、事前に確認が必要です。
まとめ
口座振替は、事業者と利用者双方にとって便利な決済方法です。事業者にとっては回収率が高くサービスの利用継続につなげやすいというメリットがある一方で、手続きの煩雑さや入金タイミングの遅れなどのデメリットも存在します。
利用者にとっても、支払い手続きが効率化されるメリットがありますが、事業者同様手続きには手間もかかります。
とはいえ、一度設定が完了すれば自動で支払いがされていくので、長期的にみるとやはりメリットが大きい決済方法と言えます。
手続きの煩雑さを解消する方法として、Webで口座の登録が完了する「Web口座振替受付サービス」を導入するのもおすすめです。