卸売業とは?小売業・商社との違いと実務上の課題を解説
メーカーがつくった商品が店頭に並ぶまでには、多くの場合、卸売業者が間に入っています。
「メーカーと小売店が直接取引すればいいのでは」と思われがちですが、卸売業者は仕入れの集約や小口配送に加え、掛売りの与信と代金回収まで引き受けています。
本記事では、卸売業の仕組みと小売業・商社との違い、役割と種類、収益の出し方、そして実務で起こりやすい課題までを解説します。

卸売業とは
卸売業とは、メーカーから商品を仕入れ、小売業者や他の卸売業者に販売する業種です。メーカーと小売業者が直接取引しにくい場面をつなぎ、流通を成り立たせています。

卸売業者は包装や小分けなどの軽い加工をしますが、商品そのものに手を加えるわけではありません。そのため卸売業者を通さず、メーカーから小売業者に直接渡すことも可能です。実際にそうしている企業もあります。
しかし、メーカーから小売業者に商品を直接販売しようとすると、負担が一気に増えます。数社で済んでいた取引先は、自社製品を扱うスーパーやコンビニの数にまで膨らみ、やり取りも発送も自社で抱えることになるためです。
メーカー3社と小売業者100店が直接取引すれば、取引関係は300通りとなります。一方、卸売業者が1社入れば103通りに収まり、受発注や配送、請求にかかる手間も減らせます。
卸売業は単に間に入るのではなく、煩雑な業務を肩代わりして取引を成立させる業種です。多くの流通ルートに卸売業者が介入しているのは、このためです。
小売業との違い
卸売業と小売業の最も大きな違いは、商品を販売する相手です。卸売業者が売る先は小売業者や他の卸売業者といった企業、小売業者が売る先は一般消費者。つまり卸売業はBtoB、小売業はBtoCに分類されます。
小売業にはコンビニやスーパーなどの実店舗のほか、ECサイトも含まれます。その役割は、商品を売るだけでなく、消費者のニーズに合った商品を提案して購買意欲を高めることです。
決済の方法も異なります。小売業は現金やクレジットカードによるその場での決済が中心ですが、卸売業は商品を先に渡して後日まとめて代金を受け取る「掛売り(後払い)」が一般的です。この違いが、後述する与信管理や代金回収の負担につながります。
商社との違い
商社は広い意味で卸売業に含まれることもありますが、両者には明確な違いがあります。取り扱う商品の種類と、物流機能の有無です。
商社が扱うのは資源や素材といった原料で、卸売業者が扱うのはそれをもとに作られた完成品です。商社は川上、卸売業者は川中・川下の取引を担うイメージです。
また、卸売業者は自社で在庫を抱え、配送まで担うのに対し、商社は物流機能を持ちません。そのため商社が入る取引では、原料の製造者とメーカーが商品を直接やり取りします。
なお商社は、顧客に代わって仕入先や販売先を探すほか、市場調査や金融サービスを提供することもあります。あらゆる商品を扱う総合商社と、特定分野に絞った専門商社があります。
| 項目 | 卸売業 | 小売業 | 商社 |
|---|---|---|---|
| 販売相手 | 小売業者・卸売業者 | 一般消費者 | メーカー・事業者 |
| 取引区分 | BtoB | BtoC | BtoB |
| 主な取扱商品 | 完成品 | 完成品 | 資源・原料など |
| 物流・在庫機能 | 持つ | 持つ(店頭在庫) | 基本的に持たない |
| 流通上の位置 | 川中〜川下 | 川下(最終接点) | 川上 |
| 主な決済方法 | 掛売り(後払い) | 現金・カード等 | 掛売り(後払い) |
| 主な収益源 | 仕入値と卸値の差 | 仕入値と売価の差 | 口銭・手数料、投資収益 |
卸売業者が担う役割
卸売業が担っているのは、仲介だけではありません。主に次の3つの役割があります。
- 物流の効率化
- 新商品や売れ筋商品の情報提供
- 決済・代金回収の円滑化
いずれも、メーカーと小売業者の双方の負担を減らすものです。順に見ていきましょう。
物流の効率化
食品や日用品は、全国各地の小売店で販売されています。メーカーがそのすべてと直接やり取りすれば、営業活動も配送業務も膨大になります。また、小売店1店舗あたりの仕入れ数は多くないため、少量の配達が大量に発生します。
これを卸売業者が引き受けることで、メーカーは商品開発や営業活動に集中できます。小売業者も、メーカーごとに発注せず卸売業者1社にまとめられるため、発注の手間を省くことができます。
新商品や売れ筋商品の情報提供
卸売業者は多くのメーカーから商品を仕入れ、多くの小売店に販売しています。両方にパイプがあるため、仕入数や販売数のデータ、新商品や売れ筋の情報をいち早く入手できます。
このような需要や競合の動きを伝えれば、小売店はニーズ把握や売り場づくりに活かせます。メーカーにとっても、店頭の反応は次の商品開発に役立つでしょう。単なる仲介ではなく、双方に有益な情報を橋渡しする役割も担っています。
決済・代金回収の円滑化
BtoBでは掛売りが一般的ですが、無数にある小売店と掛売りで取引するのは、請求業務の負担や未回収リスクを考えると現実的ではありません。メーカーと小売店が直接取引すれば、前払いや代引きに限られるでしょう。
卸売業者は小売店と密にやり取りをする立場にあるため、信頼をもとにした掛売りを成立させられます。メーカーは卸した分の代金を確実に回収でき、小売業者は掛けで仕入れられる。流通全体の未回収リスクを卸売業者が引き受けることで、取引が成り立っているのです。
関連記事:掛け払いとは?~掛け払い代行サービスのメリットや選び方を徹底解説
卸売業の種類

ひと口に卸売業といっても、流通のどの段階にいるか、何を扱うか、そして在庫や代金回収のどこまで担うかによって役割は変わります。取引先がどのタイプかを知っておくと、商談の進め方も見えてきます。
流通段階で見る一次卸・二次卸・三次卸
メーカーから小売業者までの間に何社入るかによる違いです。一次卸(元卸)はメーカーから直接仕入れる卸売業者で、取扱量が大きく新商品の情報も早く入ります。二次卸(中間卸)は一次卸から仕入れ、地域の小売業者へ販売する卸売業者。地域ごとの品揃えと小口配送の担い手です。さらに小規模な店を相手にする三次卸が入ることもあります。
段階が増えるほど各段でマージンが乗るため、近年は段階を減らす「流通の短縮化」が進んでいます。ただし小規模な小売店には、細かい単位で仕入れられる二次卸・三次卸が欠かせません。
取扱商品で見る総合卸と専門卸
総合卸は、食品や日用品など幅広いカテゴリーを取り扱います。小売業者にとっては、1社への発注で必要な商品をまとめて仕入れられる点がメリットです。専門卸は、医薬品やアパレルなど特定分野に特化した卸売業者で、商品知識と業界内のネットワークを強みに、提案力で差別化を図ります。
機能で見る2つのタイプ
自社で商品を買い取って在庫を持ち、配送や与信・代金回収まで担うのがフル機能型で、日本の卸売業の多くがこれにあたります。対して、在庫を持たず売り手と買い手をつないで手数料を得る仲介型(代理商)もあります。
卸売業はどう利益を出すのか
日本の卸売業の多くは、商品を買い取って売るフル機能型です。その収益は、仕入れた価格と販売した価格の差額から生まれます。在庫を持たない仲介型の収入源は手数料ですが、ここでは大半を占めるフル機能型を前提に、差額をどう設計し、どう守るかを見ていきます。
基本は仕入値と卸値の差
仕入値と卸値の差が、卸売業の売上総利益(粗利)です。卸売業は1件あたりの粗利率が小売業より低くなりやすく、取扱量で利益を積み上げる薄利多売の構造になりがちです。取引の件数と在庫の回転率、1件あたりのコスト管理が、そのまま収益を左右します。
掛け率で卸値を決める
卸売の取引では、価格を「掛け率」で表すのが一般的です。メーカー希望小売価格(上代)に対する卸値(下代)の割合を指します。
たとえば上代10,000円の商品を掛け率60%で卸すなら、卸値は6,000円。これをメーカーから掛け率50%(5,000円)で仕入れていれば、粗利は1,000円です。
掛け率は取引量や支払条件によって変わります。同じ商品でも取引先ごとに違うのは珍しくないため、条件はセットで確認しておくと認識のずれを防げます。
関連記事:掛け率とは?計算方法と関連用語を解説
粗利を押し上げる要素・圧迫する要素を管理する
粗利を押し上げるのは、独占販売権やプライベートブランドの取り扱い、まとめ配送による物流効率の改善、在庫回転率の向上です。
逆に圧迫するのは、返品や値引き、売れ残り在庫の陳腐化、配送費の上昇、そして取引先の倒産による未回収です。特に未回収は、粗利ではなく売上そのものが失われます。先の例なら、1件の未回収を埋めるのに同じ商品を10件売らなければ追いつきません。
卸売業の実務でよくある課題

卸売業は取引先の数が多く、商品と代金の流れの両方を引き受けているため、次のような課題を抱えやすい業種です。
- アナログ業務が多い
- 掛売りに伴う与信管理・未回収リスク
- 請求書発行・入金消込などの経理業務負荷
- 事業所数が減少している
それぞれ、現場でどのような形で表れるのかを見ていきましょう。
アナログ業務が多い
卸売業者の主な業務である受発注は、いまだにFAXや紙の請求書が多用されています。非効率なうえに、属人化や人的ミスが起こりやすいのが難点です。具体的には次のような形で実務に響きます。
手書きのFAXは文字がつぶれやすく、数量や品番を読み違えれば返品と再出荷のコストが発生します。注文内容を販売管理システムに手入力し、請求書作成時にまた入力すれば、そのたびに転記ミスの確率が上がります。
注文が集中する時期はFAXの処理だけで人手が埋まり、増員か残業でしのぐしかありません。取引先ごとの掛け率が個人のメモに依存していれば、担当者の休暇や退職のたびに業務が止まります。
いずれもデジタル化で解消できる課題です。着手しなければノウハウも蓄積されず、競合に後れを取ります。
掛売りに伴う与信管理・未回収リスク
卸売業は掛売りが前提のため、商品を先に渡し、代金は後から受け取ります。取引が成立した時点で代金は手元になく、相手が支払える状態かを自社で見極めなければなりません。
この与信管理が、取引先の多い卸売業では重い負担になります。決算書や信用情報を確認し、与信限度額を設定し、取引開始後も支払い状況を見ながら見直す。これを数十社、数百社分続けることになります。審査に時間をかければ新規取引が遅れ、簡略化すれば貸し倒れのリスクが高まります。
支払いが遅れた取引先への督促も重なります。営業担当者は関係を気にしながら支払いを求めることになり、言いにくさから後回しにしてしまい回収が遅れる悪循環も起こりがちです。
請求書発行・入金消込などの経理業務負荷
請求業務の量は、取引先数と取引頻度の掛け算で決まります。取引先が100社あり月に数回の納品があれば、締めのたびに100社分を集計して請求書を発行することになります。
特に負担が大きいのが入金消込です。実務では、次のようなケースが頻発します。
- 複数の請求がまとめて振り込まれる
- 振込手数料が引かれて金額が合わない
- 振込名義が請求先と違う
- 一部しか入金されない
いずれも自動処理しきれず、担当者が1件ずつ確認するしかありません。未入金を消込済みとすれば、督促のタイミングも逃します。
制度対応のコストも増えています。免税事業者からの仕入れは、2026年10月から仕入税額控除が80%から70%に下がりました。取引先ごとに登録状況を管理する必要があるため、取引先数が多いほど影響は大きくなります。
事業所数が減少している
受発注システムの進歩で、卸売業者を通さずメーカーと小売店が直接取引できるようになりました。メーカーがECサイトで消費者に直接販売するモデルも広がっています。
この流通の短縮化は統計にも表れています。総務省・経済産業省「経済センサス‐活動調査」によると、卸売業の事業所数は2016年の364,814事業所から2021年には348,889事業所へと約4.4%減少。従業者数も約394万人から約386万人へ減りました。
※両年の調査は方法が異なるため、統計局は単純比較に注意を促しています。
ただし市場そのものが消えたわけではありません。経済産業省「商業動態統計」では、2025年の卸売業販売額は前年比1.3%増で5年連続の増加です。取引額は保たれる一方、担い手は減っており、淘汰と再編が進んでいると見るほうが実態に近いでしょう。
卸売業の今後の見通し
事業所数の減少は、卸売業者が間に入る意味が問われていることを示しています。この先の動きは大きく3つです。
取引のデジタル化はさらに進む
経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査」によると、2024年のBtoB-EC市場規模は514.4兆円、EC化率は43.1%。企業間取引の4割超がすでに電子化されています。
受発注をFAXや電話に頼ったままでは選ばれにくくなります。デジタル化は効率化の手段であると同時に、取引を続けるための条件になりつつあります。
物流機能の価値はむしろ高まる
2024年4月からトラックドライバーの時間外労働に上限規制が適用され、輸送力の確保が業界全体の課題になりました。多数の小売店へ少量ずつ届ける配送は、メーカーが自前で担うには重い負担です。
配送をまとめて引き受けられる卸売業者の物流機能は、希少性を増していく可能性があります。
求められる役割は「仲介」から「提案」へ
商品を右から左へ流すだけの機能は、システムに置き換えられていきます。一方、取引先に合う品揃えを組み立てる、販売データをもとに売り場を提案する、与信と回収を引き受けるといった役割は、人とノウハウが必要な領域として残ります。
こうした業界の変化は個人の努力だけでは変えられません。ただ、提案や品揃えに時間を使える体制をつくれるかは、自社で決められる部分です。
卸売業の課題を解決する方法
ここまでの課題は、いずれも取引先が多いほど業務量が膨らむという共通点があります。人を増やして対応すると、取引先が増えるたびに同じことを繰り返すことになります。取引先が増えても業務量が増えない仕組みをつくることが解決策です。
受発注のシステム化
受発注のアナログ業務の課題を解決する方法として、BtoB ECの導入が挙げられます。
属人的な対応や人的ミスをなくして、受発注業務を効率化でき、商品情報をサイトに載せれば問い合わせ対応の負担も減ります。取引先ごとの掛け率や納品条件をシステムで管理すれば、属人化の解消にもつながります。
既存の取引先だけで売上を伸ばすには限界があり、新規開拓も欠かせません。ECであれば、対面では手が届かない遠方の取引先にも営業できます。小口の取引先にも、キャンペーンやクーポンで購入頻度や単価の向上を狙えます。
掛け払い代行サービスの活用による与信管理・回収業務の効率化
一方、与信管理や請求・回収の負担は、受発注をシステム化しただけでは残ります。ここで有効なのが掛け払い代行サービスです。
例えば掛け払い・請求代行サービスのPaidでは、与信審査から請求書の発行、代金回収、督促までを代行しています。取引先が増えても社内の業務量は増えにくく、与信審査はオンラインで完結するため新規取引の開始も早まります。未回収が発生した場合も代金が保証されます。
与信の判断と督促をPaidが引き受けるため、営業担当者は取引先との関係を気にしながら支払いを求める必要がなくなり、提案に集中できます。経理担当者も、入金消込の確認作業から解放されます。取引先が増えても社内の業務負担を抑えられる点が、大きなメリットです。
与信管理や請求・回収業務の負担を減らしたい方は、Paidの資料をダウンロードして、サービスの仕組みや導入効果をご確認ください。
BtoB取引の請求業務も、未回収リスクも。
今の関心に近い資料をお選びください(どちらも無料)
Paid活用事例
【業種別】Paid導入の効果を事例で紹介
~掛売りに潜む課題を解決~
Paidは「掛売り」で発生する課題をすべて解決する決済サービスです。Paid導入で得られる効果を業種ごとに事例でご紹介します。
業種別事例集をダウンロード事業の拡大に合わせてシステムや代行サービスで効率化を
卸売業は単に間に入る業種ではなく、物流の効率化、情報提供、掛売りの与信と代金回収という、流通に必要な手間とリスクをまとめて引き受けています。
だからこそ、実務では取引先の多さがそのまま負担になります。FAXや紙の受発注に伴うミスと工数、取引先ごとの与信審査と督促、件数に比例して増える請求書発行と入金消込。どれも件数が増えるほど重くなる業務です。
取引のデジタル化が進んでも、品揃えの提案や与信・回収の引き受けといった役割は残ります。むしろ、そこに時間を使えるかどうかが分かれ目です。
受発注はシステム化で、与信管理や請求・回収は掛け払い代行サービスで効率化する。自社の業務のどこに時間が取られているかを、一度洗い出してみてはいかがでしょうか。

監修者
大橋 正人
株式会社ラクーンフィナンシャル 執行役員 Paid推進部長
2006年に株式会社ラクーン(現:ラクーンホールディングス)に入社。経営企画室にて卸サイト「スーパーデリバリー」のマーケティング担当として従事。2009年より小売店の審査部門の責任者を経て、2010年「決済サービスPaid(ペイド)」の立ち上げに参画。2019年からラクーンフィナンシャルが提供する「Paid」と「URIHO」の2つのサービスをマーケティング面から統括。2024年からはPaidの事業責任者として、企業の請求業務・決済まわりの課題解決に向けて活動している。
主な掲載・登壇実績
・SFA JOURNAL|掛け払い・請求代行サービス「Paid」インタビュー(2025年)
・ECのミカタ|企業間後払い決済サービス「Paid」インタビュー(2023年)
・日本ネット経済新聞(日流ウェブ)|早期資金化サービス「Paid早期払い」対談インタビュー(2019年)
・ビズスタ|登壇者プロフィール
